巨木探訪:養父市(2)
神社からさらに3kmほど西に進んで県272に右折、琴弾トンネルを抜けると国9に出ることができる。
左折して国9→県87と進んでハチ高原に向かった。
ハチ高原は氷ノ山から鉢伏山の裾野に広がる高原で、周辺には数ヶ所のスキー場がある。
この地域を訪れるのはもちろん初めてであるが、山奥に向かって行くにもかかわらず観光バスと対向する。
道はそんなに狭くないので走りにくいわけではないのだが、夏場でも観光バスが来るほどの賑わいがあるのか・・・?
路線バスも通っているのだが、終点前の『鉢伏中』まで登って行くと、ははぁ、民宿が林立している。
これらの民宿はもちろん冬場のスキー客を当て込んだものであり、冬季には相当の賑わいを見せるのであろう。
夏場は登山目的の客と若干の観光客というところか。
夏の真昼とあって人影はあまり見られないが、冬には一大リゾート地に変貌する典型的な日本の集落の様相である。
さて、無料の駐車場を探すと大久保第一、第二駐車場があった。
第一駐車場に向かったが、ここは『養父市関宮活性化施設』というよくわからない名称の建物の駐車場を兼ねているようだ。
予想に反して野外の駐車場には一台の車もない。
日当たりが良すぎて暑いので、棟上げになっている体育館のような建物の1階に駐車した。
昼食を済ませて、さて出発である。
播但連絡道を通っている時には周辺の山に雲がかかっていたし、山の天気は変わりやすいというので心配していたのだが、この日はどピーカン。
私の格好はというと、普通のTシャツに綿パン、頭と首に手拭いを巻き、腰には500mlのペットボトルのお茶1本をぶら下げただけである。
さすがに足元はトレッキングシューズであるが、登山者からみれば噴飯ものの軽装であろう。
大久保登山口には『氷ノ山・ホードー杉』の大きな看板、むむ、やはり有名なスギなのだ。
アスファルトの道を山の方に入ると、彼方に尾根が見える。
今からあそこまで登るのだという実感がこみ上げてくる。
アスファルトが途切れた先はコンクリート敷の道。
傍らには渓流が流れており、私と同年代くらいの夫婦が休憩していた。
軽く挨拶。
こちらの夫婦は下山中とのことであったが、二言三言交わしているうちに奥様が地図を取り出した。
私はと言えば、もちろん地図など持っていない。
若干の不安を覚えちょっと見せてもらったが、なんだ、たいして詳しいことが書かれているわけでもない。
「そこの先のコンクリートが崩れているけど、横の畑から上に行けますよ。その先はすごく細い道です。」
というアドバイスを受けて山道へと入って行った。
登山道は確かに細かった。
場所によっては幅30cmくらいである。
もちろん勾配はキツい。
大山の登山道と比べると、こちらは獣道である。
たちまち息が上がり大量の汗が吹き出す。
小休止を何度も繰り返しながら、やっと視界の開ける所まで来た。
潅木が消え草一面の斜面。
尾根がぐんと間近に見えるが、それでもまだまだ相当の距離。
力を振り絞り草原を登る。
周囲を遮る物がないので、山の高さが実感できる。
そして、やっと尾根に到着!
ここにもホードー杉の案内標識があった。
とりあえず、地面にヘタり込む。
しかし・・・一息ついて行先を見やると、ゲッ、めっちゃ急勾配じゃん!
まだこれを登らなければならないのか・・・。
立ち上がるとちょっと頭がクラッとした。
大丈夫か、自分?
それでもなんとか勾配を登りきると、そこには案内標識があった。
ホードー杉まではあと500mである。
やれやれ、やっとここまで来た。
しかもここからは少し下るので楽チンである。
標識を写真に収めて・・・っと。
あれっ?
おいおい!?
なぜかデジカメが作動しない。
うっそだろー!!
駐車場で落としたせいか、汗に濡れたズボンのポケットに入れていたので水分の影響か、それはわからないが何度やってもシャッターが下りなくなっているのだ。
かと言って、ここまで来ておいて、写真が撮れないという理由で引き返すわけにはいかない。
そのまま標識の示す方向に歩を進めた。
ここでさらに異変が起こった。
足が引き攣るのである。
ここまで登り道で、踵関節を屈曲状態で酷使した。
それが急に下りになったため、踵関節は逆に伸展状態になる。
当然、今まで伸ばしていた筋や腱は楽になるが、収縮していた筋や腱は一気に引っ張られるわけである。
痛たたた・・・
痛む足を摩って誤魔化しながら何とか進んで行くと、ついに木立の向こうにホードー杉発見!
やったー!やっと辿り着いた!!
もう一度デジカメを出してみたが、やはり作動せず。
仕方ない、これは目に焼き付けておくしかなかろう。
さて、やっと出会えたホードー杉であるが、確かに立派であった。
枝は四方にうねり、いわゆる“暴れ杉”の系統であるようだ。
しかし・・・正直なところ、思ったほどの感動はなかった。
確かに11.5mの幹周はすごいのだが・・・低い位置からの枝分かれと樹高がいまいちであることで全体的な迫力に欠けるのであろう。
それでもやっと出会えたことに満足。
というか、そこまでして樹に会いに来た自分に満足しているのかもしれないが。
ということで、ホードー杉の写真は、なし。
どんな巨樹かな、と思われたらネットで検索してください。
それにしても、今までの樹行で唯一写真を残せなかったことは残念である。
さて下山であるが、登りと比べると楽とはいえ、ヘトヘトの体であの道を下りていくのは考えただけでもゾッとする。
しかし下りないわけにはいかない。
足の痛みはじっとしているよりも歩いている時の方が少ないようなので、極力立ち止まらないようにして無心で下った。
ふと気がつくと、歩くたびにペコペコと変な音がする。
片方のトレッキングシューズの靴底が剥がれかけていたのだ。
なんせ10年以上前に購入した代物だから、劣化していても不思議はない。
しかし、これはいかん。
完全に剥がれる前に何とかしなければ。
靴紐を半分くらい解き、足の甲の位置で靴底に回して縛り、急場を凌いだ。
ようやく下山。
登山開始からの所要時間は3時間であった。
2本の手ぬぐいもTシャツも、そしてズボンも尻の辺りまで(もちろんパンツも)汗でビショビショである。
ヨレヨレになった足取りで自動販売機まで辿り着き、スポーツドリンクを一気飲み。
やっと人心地がついた。
時刻は4時半、帰る時間である。
車に戻ってシャツを着替え、シートにはビニール袋を敷いて鉢伏を後にした。
帰路は少し北に上がってハチ高原に回ってから東に向かうのだが、途中の別宮地区には県指定天然記念物の「別宮の大カツラ」という巨樹があるので立ち寄った。
こちらは道路脇に駐車場・トイレ・ベンチなどが備えられている。
しかしせっかくのカツラもデジカメなしではなぁ・・・一応、写メに撮ってはみたがカツラの雄大さは表現できない。
よって、こちらの写真は却下。
養父市には他にもいくつか巨木があるので、いつかまた来なければならない。
「別宮のカツラ」はまたその時に訪れることにしよう。
しかし「ホードー杉」は・・・さすがにもう一度登山する気にはなれない。
記憶の中にだけしまっておこう。
翌日、奥さんや仕事先のスタッフにこの話をしたところ、皆が皆、口をそろえてこう言った。
「山をナメてますね!」
そう、確かに私は山をナメていた。
稜線でクラッときた時、あれは軽い脱水症状=熱中症だったのではあるまいか。
とは思うものの、私とて好んで危ない橋を渡るわけではない。
ある程度の勝算はあったし、危険を感じれば引き返すという潔さも持っている。
ま、無事に生還できたことだし、これは笑い話ということにしておこう。
左折して国9→県87と進んでハチ高原に向かった。
ハチ高原は氷ノ山から鉢伏山の裾野に広がる高原で、周辺には数ヶ所のスキー場がある。
この地域を訪れるのはもちろん初めてであるが、山奥に向かって行くにもかかわらず観光バスと対向する。
道はそんなに狭くないので走りにくいわけではないのだが、夏場でも観光バスが来るほどの賑わいがあるのか・・・?
路線バスも通っているのだが、終点前の『鉢伏中』まで登って行くと、ははぁ、民宿が林立している。
これらの民宿はもちろん冬場のスキー客を当て込んだものであり、冬季には相当の賑わいを見せるのであろう。
夏場は登山目的の客と若干の観光客というところか。
夏の真昼とあって人影はあまり見られないが、冬には一大リゾート地に変貌する典型的な日本の集落の様相である。
さて、無料の駐車場を探すと大久保第一、第二駐車場があった。
第一駐車場に向かったが、ここは『養父市関宮活性化施設』というよくわからない名称の建物の駐車場を兼ねているようだ。
予想に反して野外の駐車場には一台の車もない。
日当たりが良すぎて暑いので、棟上げになっている体育館のような建物の1階に駐車した。
昼食を済ませて、さて出発である。
播但連絡道を通っている時には周辺の山に雲がかかっていたし、山の天気は変わりやすいというので心配していたのだが、この日はどピーカン。
私の格好はというと、普通のTシャツに綿パン、頭と首に手拭いを巻き、腰には500mlのペットボトルのお茶1本をぶら下げただけである。
さすがに足元はトレッキングシューズであるが、登山者からみれば噴飯ものの軽装であろう。
大久保登山口には『氷ノ山・ホードー杉』の大きな看板、むむ、やはり有名なスギなのだ。
アスファルトの道を山の方に入ると、彼方に尾根が見える。
今からあそこまで登るのだという実感がこみ上げてくる。
アスファルトが途切れた先はコンクリート敷の道。
傍らには渓流が流れており、私と同年代くらいの夫婦が休憩していた。
軽く挨拶。
こちらの夫婦は下山中とのことであったが、二言三言交わしているうちに奥様が地図を取り出した。
私はと言えば、もちろん地図など持っていない。
若干の不安を覚えちょっと見せてもらったが、なんだ、たいして詳しいことが書かれているわけでもない。
「そこの先のコンクリートが崩れているけど、横の畑から上に行けますよ。その先はすごく細い道です。」
というアドバイスを受けて山道へと入って行った。
登山道は確かに細かった。
場所によっては幅30cmくらいである。
もちろん勾配はキツい。
大山の登山道と比べると、こちらは獣道である。
たちまち息が上がり大量の汗が吹き出す。
小休止を何度も繰り返しながら、やっと視界の開ける所まで来た。
潅木が消え草一面の斜面。
尾根がぐんと間近に見えるが、それでもまだまだ相当の距離。
力を振り絞り草原を登る。
周囲を遮る物がないので、山の高さが実感できる。
そして、やっと尾根に到着!
ここにもホードー杉の案内標識があった。
とりあえず、地面にヘタり込む。
しかし・・・一息ついて行先を見やると、ゲッ、めっちゃ急勾配じゃん!
まだこれを登らなければならないのか・・・。
立ち上がるとちょっと頭がクラッとした。
大丈夫か、自分?
それでもなんとか勾配を登りきると、そこには案内標識があった。
ホードー杉まではあと500mである。
やれやれ、やっとここまで来た。
しかもここからは少し下るので楽チンである。
標識を写真に収めて・・・っと。
あれっ?
おいおい!?
なぜかデジカメが作動しない。
うっそだろー!!
駐車場で落としたせいか、汗に濡れたズボンのポケットに入れていたので水分の影響か、それはわからないが何度やってもシャッターが下りなくなっているのだ。
かと言って、ここまで来ておいて、写真が撮れないという理由で引き返すわけにはいかない。
そのまま標識の示す方向に歩を進めた。
ここでさらに異変が起こった。
足が引き攣るのである。
ここまで登り道で、踵関節を屈曲状態で酷使した。
それが急に下りになったため、踵関節は逆に伸展状態になる。
当然、今まで伸ばしていた筋や腱は楽になるが、収縮していた筋や腱は一気に引っ張られるわけである。
痛たたた・・・
痛む足を摩って誤魔化しながら何とか進んで行くと、ついに木立の向こうにホードー杉発見!
やったー!やっと辿り着いた!!
もう一度デジカメを出してみたが、やはり作動せず。
仕方ない、これは目に焼き付けておくしかなかろう。
さて、やっと出会えたホードー杉であるが、確かに立派であった。
枝は四方にうねり、いわゆる“暴れ杉”の系統であるようだ。
しかし・・・正直なところ、思ったほどの感動はなかった。
確かに11.5mの幹周はすごいのだが・・・低い位置からの枝分かれと樹高がいまいちであることで全体的な迫力に欠けるのであろう。
それでもやっと出会えたことに満足。
というか、そこまでして樹に会いに来た自分に満足しているのかもしれないが。
ということで、ホードー杉の写真は、なし。
どんな巨樹かな、と思われたらネットで検索してください。
それにしても、今までの樹行で唯一写真を残せなかったことは残念である。
さて下山であるが、登りと比べると楽とはいえ、ヘトヘトの体であの道を下りていくのは考えただけでもゾッとする。
しかし下りないわけにはいかない。
足の痛みはじっとしているよりも歩いている時の方が少ないようなので、極力立ち止まらないようにして無心で下った。
ふと気がつくと、歩くたびにペコペコと変な音がする。
片方のトレッキングシューズの靴底が剥がれかけていたのだ。
なんせ10年以上前に購入した代物だから、劣化していても不思議はない。
しかし、これはいかん。
完全に剥がれる前に何とかしなければ。
靴紐を半分くらい解き、足の甲の位置で靴底に回して縛り、急場を凌いだ。
ようやく下山。
登山開始からの所要時間は3時間であった。
2本の手ぬぐいもTシャツも、そしてズボンも尻の辺りまで(もちろんパンツも)汗でビショビショである。
ヨレヨレになった足取りで自動販売機まで辿り着き、スポーツドリンクを一気飲み。
やっと人心地がついた。
時刻は4時半、帰る時間である。
車に戻ってシャツを着替え、シートにはビニール袋を敷いて鉢伏を後にした。
帰路は少し北に上がってハチ高原に回ってから東に向かうのだが、途中の別宮地区には県指定天然記念物の「別宮の大カツラ」という巨樹があるので立ち寄った。
こちらは道路脇に駐車場・トイレ・ベンチなどが備えられている。
しかしせっかくのカツラもデジカメなしではなぁ・・・一応、写メに撮ってはみたがカツラの雄大さは表現できない。
よって、こちらの写真は却下。
養父市には他にもいくつか巨木があるので、いつかまた来なければならない。
「別宮のカツラ」はまたその時に訪れることにしよう。
しかし「ホードー杉」は・・・さすがにもう一度登山する気にはなれない。
記憶の中にだけしまっておこう。
翌日、奥さんや仕事先のスタッフにこの話をしたところ、皆が皆、口をそろえてこう言った。
「山をナメてますね!」
そう、確かに私は山をナメていた。
稜線でクラッときた時、あれは軽い脱水症状=熱中症だったのではあるまいか。
とは思うものの、私とて好んで危ない橋を渡るわけではない。
ある程度の勝算はあったし、危険を感じれば引き返すという潔さも持っている。
ま、無事に生還できたことだし、これは笑い話ということにしておこう。