巨木探訪:朝来市(4)
実はスギから200mほど奥に向かえば藤和の集落がある。
これはもう集落のどこかで電話を借りるしかない。
怪しいおっさんであるが、事情を説明すれば電話くらいは貸してくれるだろう。
意を決し集落に向かったものの、民家はあっても人の姿は見えない。
そりゃそうだよな、こんな山奥だから住んでいるのはきっと老人ばかりだろう。
そんな民家にいきなり「こんにちは。」と訪ねると訝しがられるよなぁ。
などと躊躇いがちに歩いていると、人の話し声が聞こえた。
とりあえず声の聞こえる方角に向かってみると、民家の庭先で爺さんと30才くらいのお兄ちゃんが作業をしながら話していた。
これはもうお願いするしかあるまい。
「すみませーん!」
事情を話すとお兄ちゃんが快く「はいはい。」と答えてくれて、ポケットから何やら取り出した。
ふと見るとスマホではないかいな!
あれっ…?
「この辺はドコモしか通じないんですよ。」
なるほど。
「僕の弟がこの近くで修理をやっているんで、とりあえずそこへ電話してみますわ。」
ああ、何とありがたいことだ!
「もしかしたらバッテリーかもわからんから、僕の車も持ってきますわ。」
そしてお兄ちゃんに連れられスギの所に戻ると、程なく弟さんもやってきた。
私の車のバッテリーを見て
「緑のランプが点いとるし、バッテリーは大丈夫と思うけどなぁ…」
と言いながら、まずは車のバッテリー同士をブースターケーブルでつないでみる。
反応なし。
数回キーを回してみたが、うんともすんとも言わない。
さっきまで普通に走っていたのだし、やはりバッテリーではないのだろうか?
さらにヤバい事態が生じているのだろうか?
弟さんが今度は一回り太いケーブルを取り出した。
再度バッテリー同士をつなぎ、お兄ちゃんの車のエンジンを吹かし、キーを回す。
かかった!
理由はわからないが、とりあえず窮地を脱出することができる。
「もしかしたらバッテリーに充電する経路のどこかがイカレとるかもしれんなぁ。それやったら途中で止まるかもしれんけど。ま、とりあえずケータイの通じるところまで行って、JAFかディーラーに連絡してみて。」
「わかりました。行ける所まで行ってみます。」
これは帰り道にどこかに寄っている場合ではない。
エンジンを止めたらいけないのだ。
丁重に礼を述べ、おそるおそる発進!
幸いなことに国道に戻るまでエンジンは動いてくれた。
何かあったら助けを呼ばなくてはいけないので、ここは一般道を帰るべきである。
しかし、そうするとかなり時間がかかってしまう。
何とか早く帰着したい一念で、無謀かもと思いつつ高速に乗った…
結果、何事もなく帰着することができた。
やれやれ。
まったく樹行にトラブルは付き物だ。
しかし今回はかなりの大物をたくさん見て来たので大満足であった。
付記:3日後、エンジンをかけてみたらやはり始動しなかった。ディーラーに見てもらったところ、やはりバッテリーの問題であった。
(了)
これはもう集落のどこかで電話を借りるしかない。
怪しいおっさんであるが、事情を説明すれば電話くらいは貸してくれるだろう。
意を決し集落に向かったものの、民家はあっても人の姿は見えない。
そりゃそうだよな、こんな山奥だから住んでいるのはきっと老人ばかりだろう。
そんな民家にいきなり「こんにちは。」と訪ねると訝しがられるよなぁ。
などと躊躇いがちに歩いていると、人の話し声が聞こえた。
とりあえず声の聞こえる方角に向かってみると、民家の庭先で爺さんと30才くらいのお兄ちゃんが作業をしながら話していた。
これはもうお願いするしかあるまい。
「すみませーん!」
事情を話すとお兄ちゃんが快く「はいはい。」と答えてくれて、ポケットから何やら取り出した。
ふと見るとスマホではないかいな!
あれっ…?
「この辺はドコモしか通じないんですよ。」
なるほど。
「僕の弟がこの近くで修理をやっているんで、とりあえずそこへ電話してみますわ。」
ああ、何とありがたいことだ!
「もしかしたらバッテリーかもわからんから、僕の車も持ってきますわ。」
そしてお兄ちゃんに連れられスギの所に戻ると、程なく弟さんもやってきた。
私の車のバッテリーを見て
「緑のランプが点いとるし、バッテリーは大丈夫と思うけどなぁ…」
と言いながら、まずは車のバッテリー同士をブースターケーブルでつないでみる。
反応なし。
数回キーを回してみたが、うんともすんとも言わない。
さっきまで普通に走っていたのだし、やはりバッテリーではないのだろうか?
さらにヤバい事態が生じているのだろうか?
弟さんが今度は一回り太いケーブルを取り出した。
再度バッテリー同士をつなぎ、お兄ちゃんの車のエンジンを吹かし、キーを回す。
かかった!
理由はわからないが、とりあえず窮地を脱出することができる。
「もしかしたらバッテリーに充電する経路のどこかがイカレとるかもしれんなぁ。それやったら途中で止まるかもしれんけど。ま、とりあえずケータイの通じるところまで行って、JAFかディーラーに連絡してみて。」
「わかりました。行ける所まで行ってみます。」
これは帰り道にどこかに寄っている場合ではない。
エンジンを止めたらいけないのだ。
丁重に礼を述べ、おそるおそる発進!
幸いなことに国道に戻るまでエンジンは動いてくれた。
何かあったら助けを呼ばなくてはいけないので、ここは一般道を帰るべきである。
しかし、そうするとかなり時間がかかってしまう。
何とか早く帰着したい一念で、無謀かもと思いつつ高速に乗った…
結果、何事もなく帰着することができた。
やれやれ。
まったく樹行にトラブルは付き物だ。
しかし今回はかなりの大物をたくさん見て来たので大満足であった。
付記:3日後、エンジンをかけてみたらやはり始動しなかった。ディーラーに見てもらったところ、やはりバッテリーの問題であった。
(了)