勝山方面
巨木探訪:蒜山方面(7)
9月になった。
気のせいか、ほんの少しだけ陽射しが弱まったような気がする。
お盆過ぎてからというもの、午後の西日が強くて少し樹行が億劫になっていたのだが、今日のような空ではそれほどでもあるまい。

いつものように午後から出発。
本日の探訪は第2回目の蒜山方面である。
前回端折った樹、探索したが不明だった樹、そして中和村の残りがターゲット。
夏休みも終わったことだし、蒜山もそんなに人出は多くなかろう。
岡山道が無料になっているので高速を使って一路蒜山へ!

蒜山までの料金は1,350円。
岡山道が有料だった時と比べると約1,000円安い。
インターを降りて正面の信号を左折し、国482を鳥取県方面に向かう。
この道の両サイドは丘陵になっており、草地にひょろっと樹が立っている風景がちょっと北海道かヨーロッパの田舎的である。

4kmちょっとで鳥取県との県境の内海乢であるが、この少し手前の右手に鳥取大学演習林に入って行く林道がある。
私有地なので当然のことながらチェーンが張られていて、無断立入禁止である。
が、そんなものに怯んでいられるか。
この先には蒜山の雄とも言うべき名を冠した「大王のマツ」があるのだ。

           マツ


チェーンを越えて林道に足を踏み入れる。
50mほど先からは未舗装の林道が山中に続いている。
資料によると『約500m北進し、そこから歩道を100m進む』と記されている。
略図では歩道は右手に伸びているようである。
歩道といってもどの程度の道なのか、おそらくは細い山道であろうと想像し右手に注意を払いながら歩いて行った。

500mは来たであろうと思える辺りで、右手の林の中に山道を示す赤いテープを発見。
しかしその入り口は草が生えて道の様相ではない。
これは違うのだろうか…と思いながら、念のためにさらに先まで進む。
相変わらず右手に道らしき道は無く、やはり先ほどのテープがそうだろうか、と引き返した。
草を分けて山中に入ると、確かにその先には細い道が続いている。
ふむふむ、この先に…と思って進んで行ったがそれらしき樹は見当たらない。
やがて道は下り始め、途中に『大山みち』という道標があった。
おそらくこの道は昔からある蒜山から大山に至る間道なのであろう。
しかし、林道からは100mどころか既に300mくらいは進んでいる。
おそらくこれ以上進んでも発見できまい、とあきらめて引き返すことにした。

杉木立が立ち並ぶ中、一人で黙々と林道に戻る。
この道が正解だったのかどうかはわからない。
他に山道がある様子はなかったが、もしかしたら草に埋もれた道があるのかもしれない。
どちらにしてもこれ以上の探索は打ち切らざるを得ないな…と林道に戻って下ることにした。
少し下ると右手に再び『大山みち』の道標が立っているのに気がついた。
登って来るときには草の陰になっていて気付かなかったのである。

                マツ

ふーん、ここからさらに続いているのか…と何気なく『大山みち』の奥を見たその時!
少し先の方に白い物が見えた。
あれはもしかして説明板?
確認のためさらに数歩進むと…眼前に風格のある樹が現れた。
これこそが「大王のマツ」である!

ああ、ここにあったのか。
何てこった、略図とは反対側手じゃないか!
これでは見つかるわけがない。
それにしても何という幸運。
先回も書いたが、往路で見つからなかったものが復路で見つかることもある。
まさにその通り。

少し開けた場所に悠然と立っている「大王のマツ」。
ちょっと見にはマツとは思えない堂々たる枝ぶりである。
しかしよく見ると…どの枝の先にも松葉が見られない。
近づいて幹に触れてみると樹皮は浮いてしまっているようである。
もしかしてほとんど立ち枯れ状態になってしまっているのだろうか?
いつまでこの姿を保っていられるのか、大いに心配である。

                マツ
地図はこちらへ

とりあえず一仕事終えた満足感とともに次の探索に向かった。

(注:ここまで書いて、ふと、県境を越えてすぐの所にも演習林に入る林道があったことを思い出した。略図では林道の起点が県内になっていたのでこの道は違うと思ったのだが、もしかして実はそちらの道が正解だったのではなかろうか?実際に地図を見ても、そちらの道は県境を越えた位置から始まっているのだが、途中からぎりぎり県内を縦走している。もしも略図に記載されている道がそちらの道であったならば、右手の山道に入るという説明も頷ける。とすると、私が間違った林道に入り「大王のマツ」に出会えたことは、極めてラッキーなことだったのではあるまいか…。)

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